卒園アルバム

今月のできたよ!

4月のできたよ!は、3月に卒園し、今月新一年生になったばかりの奈々ちゃんの卒園アルバムの表紙のお絵描きです。

親御さんより

ABAを始める前の奈々は、「1日のほとんどを泣いて過ごしている」と言っても過言ではないほど、頻繁に癇癪を起こしている子でした。
当時のお絵描きの様子は、クレヨンをグーで握って、紙にぐしゃぐしゃと書き殴るような状態だったため「いつか絵が描けるようになったらいいな」と考えたことすらありませんでした。とにかく癇癪が多かったので、お絵描きの以前に「私がこの子に何か物事を教えることができるのだろうか」と思っていました。

そんな奈々が、ぬりえの課題に取り組み始めたのは2歳のころでした。クレヨンを正しく持つことから教え始めましたが、取り組み始めたころの奈々は、こちらが持ち方を正そうと奈々の手を触るだけで長時間癇癪を起こすこともあり、1回の課題をやり切るまでとても時間がかかってしまうことがありました。このような状態でしたので、課題の進みはゆっくりでしたが、つまずいた時はコンサルで上原先生に介入の仕方をお聞きして、ご褒美を変えてみたり、手助けの仕方を変えてみたり、一つ一つ解決していくことで、しだいに落ち着いて課題に取り組むことが増え、着実に教えていくことができるようになりました。

ぬりえの課題の終盤の頃には、色塗りをすることに楽しさを見出したようで、余暇の時間に自らぬりえブックとクレヨンを持ってきて、表紙のお手本を見て、色を使い分けながら黙々と取り組んでいた姿を見た時は、とても感動したことを覚えています。
色塗りのスキルが安定した年中のころ、鉛筆の課題に取り組み始めました。鉛筆も正しく持つところから教えました。直線や波線や十字を真似して描いてもらっていたのですが、ここまでは比較的スムーズに進みました。しかし丸やハートの段階になると形がいびつになり、やり直しばかりになるからか奈々のモチベーションが下がっていき、「いや!」と言って描くことを拒否したり、鉛筆を投げたり、といった問題行動が出てきました。困り果て、上原先生にコンサルでビデオを見ていただいたところ、「小まめに褒めてあげてほしい」というアドバイスと、「鉛筆の持ち方が崩れている」とご指摘を受けました。

思い返してみると、私は奈々が描いている線にばかり気を取られ、褒めることが少なく、そしていつの間にか鉛筆の持ち方が崩れていたことに気付けていなかったのです。そこからは初心に戻り、鉛筆の持ち方に常に気を配り、小まめに褒めたり、ご褒美の見直しも行い、習得することができました。様々な形を模倣で描けるようになった年長のころ、鉛筆で絵を描く課題に入りました。問題行動は全くなかったわけではありませんが、これまでの鉛筆の課題に比べたら、とても少なく、予想していたよりもスムーズに進めることができました。この頃くらいから、余暇で自らお絵描きをするようになりました。さらに、色塗りのスキルを活かして、鉛筆で描いた絵にクレヨンや色鉛筆で色を塗って楽しんでいる様子も見られるようになりました。

その頃、通っていた幼稚園で卒園アルバムの表紙の絵を描く機会がありました。
「幼稚園の思い出を描いて」とだけ伝え、その後は黙々と取り組んでいました。そして出来上がった表紙が写真のものになります。たくさんの色を使い分け、丁寧に色を塗り、思いのままに可愛らしい絵を描いてくれました。私が一つ一つ「これは何?」と聞くと、「虹!」や「お花!」などと答えて教えてくれました。幼稚園の思い出とは関係のない絵もあり、決して上手とは言えませんが、これまでの課題の取り組みを思い返しながら見ると、とても感動しました。卒園アルバムが製本になるのは5月とのことで、今から出来上がりが楽しみです。

そして、この絵を見て「ABAをやってきてよかった!」と思いました。
そう思うことが出来たのは、奈々の頑張りはもちろんですが、どんな時も奈々が前に進めるように、コンサルで上原先生がアドバイスや励ましをくださり、ご尽力くださったおかげだと思っています。上原先生のブレないご指導は、奈々と私にとって本当に必要不可欠なものでした。
他にも、家族や園の先生や療育でお世話になった方、ABAの先輩や仲間にも、たくさんの励ましをいただいてきました。関わってくださった全ての方に感謝しています。

たくさんの方に見守られながら、この春、奈々は校区の支援級に就学しました。先日行われた入学式では、式の最初から最後まで落ち着いて過ごすことができました。この姿にも、とても感動しました。
就学すると、またたくさんの試練が待っていると思いますが、これまで通り一つ一つ乗り越えていきたいと思います。

コンサルタントより

奈々ちゃんの卒園アルバムは、とてもカラフルで可愛らしい表紙となりました。コンサル時に、奈々ちゃんのお母さんからは、普段具体的なことを伝えないと苦手なことが多いのに、黙々とひとりでお絵描きに取り組んでいたというお話を伺っておりました。完成途中のものを見せていただいた時に、仕上がりがとても楽しみにしておりました。

奈々ちゃんのお母さんが書いてくださったように、「自分の好きなように描く」というスキルがつくまでの道のりは決して短いものではありませんでしたが、その都度課題を丁寧に取り組んでくださってきた積み重ねにより、いつしか好きではなかった塗り絵やお絵描きを楽しむようになりました。奈々ちゃんのお母さんもいつもお疲れさまです!

ABAコンサルタントとして私が目指しているものは、お子さんが生活していく上で大切だと思われるスキルを習得してもらうことです。そして、欲を言えば、そのスキルを使うことを楽しんでくれることです。奈々ちゃんを含め、多くのお子さんが最初は抵抗のあった課題でも、課題の域を越して余暇スキルとなり、楽しそうに取り組む姿を見させていただける時ほど嬉しいことはありません。

奈々ちゃんと全ての新一年生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
これまで培ってきたスキルは学校生活で役に立ち、新しいスキルを習得する基礎となっていくことでしょう。楽しく有意義な毎日となりますよう心より祈っております。