補助輪が外れる

今月のできたよ!

7月の今月のできたよ!二つ目の投稿も4歳の日向夏(ひむか)ちゃんの登場です。補助輪なしの自転車に乗れることは、未就学から小学校中学年くらいまでにマスターすることを目指す方が多いと思います。ABA-MAXでも、自転車課題はその他の運動課題と同様、ご家族の皆様に力をいれていただいております。自転車を強化子として使う、余暇スキルとして使う、また交通手段で使う、など各ご家庭により目的はさまざまだと思いますが、補助輪なしで自転車に乗ることは筋肉を鍛え、バランスを整えるなど運動神経の改善に大きく役立ちます。

親御さんより

生来から臆病な性格で怖いことや痛いことを避けるタイプの娘でした。

そのため、危険行動などはほとんどありませんでしたが、自分が怖い、痛いなどのリスクある遊び道具(ブランコや鉄棒など)は嫌がり、こちらがサポートしても最終的には癇癪を起こして周りの目が気になり、諦めることがほとんどでした。それでもいわゆるママチャリに乗った時のサイクリングやクルマのドライブは好きな娘だったので、もしかしたら自転車とか上手になるかも!と淡い期待を抱いて子供用の自転車を必死で探しました。ちょうど2020年の初夏でしたが、新型コロナウイルス騒動の真っ只中で、自転車販売の流通が停滞していたのでネットや近所の自転車店を必死に探して何とか子供用自転車を購入しました。

期待を胸に、いざ自転車に乗せてみたものの、バランスを崩したり、ペダルに脚をぶつけたりとしたことで怖くて痛い乗り物と認知されたようで一向にペダルを漕ぎ出す様子もなく、しまいには癇癪を起こしたために泣く泣く諦めました。炎天下の中で必死に探して見つけた自転車で、何とかしてこの娘に楽しみを覚えさせてあげたいと思っていましたが、その後は自転車に再トライする勇気も無くなってしまい、自転車は部屋の中でカバーをかけたまま保管されたままでした。正直、この子には一生自転車は乗れないのではないかと打ちひしがれてしまったことを今でも覚えています。

その頃から上原先生のコンサルが開始され、癇癪→消去にはじまり、コンプライアンスの向上や机上学習、自助スキルの向上のための本格的なABA(敢えてチーム上原と称します)が始まりました。おかげで今までは出来なかったことでも、日向夏にとって出来るやり方で教えることで出来るようになり、コンプライアンスも著しく上昇していきました。

年が明けてから、上原先生から自転車を乗ってみてはどうかと提案されましたが、最初は親子ともにトラウマになっており、正直あまり自信はありませんでした。しかし、自転車に乗せてペダルの漕ぎ方から教えてみたところ、なんと自ら漕ぎだすようになりました。しまいにはまるで水を得た魚のようにいきいきと自転車を漕ぐようになり、自転車がいわゆる外遊びの課題ではなく、楽しみに変わっていったようでした。

そしてその半年後になり、とうとう上原先生から補助輪を外すことを提案されました。これでもし転んだりしたら自転車がまた嫌いになったりしないだろうかと不安も混ざりながらのトライでした。最初からは当然上手くは行かないので、スモールステップでの指導ではありましたが、転んだり足をぶつけたりして上手く行かなくとも自ら自転車に跨り、漕ぎだそうとする日向夏の姿がそこにありました。

その時、私達夫婦の中でこの娘は絶対に補助輪無しで自転車に乗れるという確信が持てた気がします。最初はこっそりと補助ハンドルを離してみて数秒でしたが、それが10秒、30秒、1分と少しずつ長くなり、今ではある程度斜度やカーブが少ない路面であれば十分に乗りこなせるようになりました。初夏の陽ざしの中で生き生きと自転車を漕ぐ日向夏の姿があります。自転車は日向夏にとって怖くて痛かったもの、そして親としても諦めてしまっていたものでしたが、今では当たり前の遊び道具、楽しみの道具となりました。

強化して何とか出来るようになったものが、逆に強化子になるなんてこんな嬉しいことはないですよね!そして、自転車のように何かを習得できることで楽しみを覚えてくれれば親としてこれ以上に嬉しいことはありません。これからも日向夏にとって新しい楽しみが増えるように、チーム上原でサポートしていきたいと思います。

コンサルタントより

「自転車」という言葉を私が出したとき、確かに日向夏ちゃんのご両親からは、ご不安であるというお話を伺いました。ご両親が課題をしようと椅子に呼んだり、できることをやってほしいと指示を出すと、大泣きしていたところからの出発だったことや、自転車は既に挑戦され挫折を感じられていらっしゃったので無理もないと思いました。それでも、再度ご夫婦で取り組んでくださり、例えば道のコンディションが通常と違うところで練習するとぐずったり、ということも乗り越えながらとうとう、補助輪を外すところまでいきました。「自転車を教えようとするとかんしゃくを起こす」というところから、「楽しそうに自転車を乗るようになった」とご両親からのご報告を受け、良い表情で自転車を乗っている姿を見せていただき、再度挑戦していただいて本当によかったなと思いました。現在、苦手、や嫌いに見えることでも、何かを乗り越えてもらえば、やってくれるようになったり、やるだけでなく時に好きにまでなってくれるお子さんたちの姿を見せていただけることが何よりも私の強化子となっています。
そして、今回お父様に「チーム上原」と呼んでいただけたのは大変光栄ですが、実際は、「チーム日向夏」の一員として、いろいろなことが出来るようになっていただけるように努めて参りたいと思っております。ありがとうございます。