東京都 なつそらさんのお話

ABAを始めて間もないころ
イベントにて珍しい樹木の模様を指差す姿

我が子は生まれつき片耳がない小耳症という障害を持って生まれてきました。生まれた時は片耳が聞こえているから成長に問題はないと言われていましたが、1歳半の検診時に発達障害の指摘を受け療育機関に通い始めました。言葉や行動の発育は通常より2年遅れで周りについて行けない状態でしたが、兄二人が通っていた幼稚園が相談に乗ってくださり、本人の特性に合わせできるだけ無理をさせない特別な配慮をしていただきました。その結果園生活では大きなトラブルはなく本人も自分の世界の中で楽しく過ごせた一方、社会性の発育は2年遅れのままでした。

その後小学校3年生の頃から気に入らないことがあると大声で暴言を吐いたり、ものを投げ飛ばす、壁をたたく、家の外であってもどこでも寝転び暴れるといった癇癪を起こすようになりました。そしてその問題行動は注意をしてもおさまることはなく、学校からも扱いに困っていると相談を受けました。本人も周囲との違いを感じ始め「自分なんか生まれてこなければ良かったんだ」と苦しみを口にし、自分の頭を力いっぱい殴る、ハサミをお腹に突き立てる真似をする等の自傷行為も見られるようになってきました。

 

耳の手術前日
入院中の行動もABAで対応

療育機関に通い始めた1歳半の頃から、妻は我が子が兄たちとは異なる特性を持っていることを心配していましたが、父である私が「2年遅れの成長は片耳しか聞こえないこの子の時間の流れであり、何れいろいろなことが自然とできるようになる」と都合の良い解釈をしていました。これは今思えば私が我が子の障害を受け入れられず、子どもが持つ苦しみから目を背けていただけでした。この私の認識の甘さから早期療育に踏み出さなかったことは今でも私の中の後悔として残り続けています。

子どもの問題行動が顕著になるに連れ、対処方法がわからず怒鳴ってしまうこともあり、都度自己嫌悪に陥るようになりました。思うようにならない現実に我が子への愛情すら自信が持てなくなるような想いに悩まされました。そうした親の想いは家族全体の明るさを奪ってゆきました。

相談をした療育機関からは薬の使用を強く勧められましたが私たちは薬を使いたくありませんでした。そのような相談を繰り返す中で、「そもそも親がほめて育ててこなかったからこうなっているのであって、薬を受け入れないなら親が何とかすべきだ」と妻が言われたことをきっかけに、自身の愚かさに気づくとともに我が子を心の底から受け入れて行動を起こさなければならないと意思を固めました。そこから藁にもすがる想いで様々なアプローチを探している中、私たちの悩みをしっかりと受け止めてくださる佐々木先生、そして上原さんに出会いABAを知りました。



 

始めた陸上


コンサルを受け始めた当初は、「なんでだよ~、どうして~」と文句の嵐で、イスにじっと座っていることもできない状態でしたが、数か月で明らかな行動の変化が見えはじめました。それに伴い癇癪の頻度は約半年で大幅に減り、癇癪が起きた場合でもおさまるのが早くなりました。

こうした子どもの変化は、上原さんの具体的なご指導に基づく親の行動変化によるものでした。子どもの反抗に対し言い返すことは反抗を強化することに繋がる、だから反抗に対しては消去をする。そして反抗が治まって正しい行動が見えたら強化する。この行動をベースに子どもと接する中で反抗に起因する負のスパイラルを脱出することができました。そして親の行動の変化から、子どもも今までと異なる親の意思を感じ取っていたように思います。当然子どもからそのような言葉が出るわけではありませんが、当時とても強く感じた我が子との間の新しい感覚でした。そのことは親子の信頼関係へとつながり、やがて家族に明るい笑い声が戻ってきました。

コンサルにおける課題設定は、学校へ行く前などの「朝の身支度」や「食事のとり方」など身辺自立のスキルに始まり、「指示を聞き入れる」「待つ」などのコンプライアンスを高めるスキル、「自分の意思を伝える」「人との話し方」といったコミュニケーションスキル、その後我が子が必要とする「様々な人との接し方」や「感情が高ぶったときの対処方法」等へと上原さんと相談しながら発展していきました。また、迷子になった時や震災時を想定した安全面にも対応したスキルも教えていきました。各スキルの習得過程では、上原さんより適切なスモールステップの目標および具体的な対処方法を提示いただき、私たちはそれを実践し子どもの変化を共有することで次のフィードバックを得てスキルアップを重ねてゆきました。

上原さんのコンサルで何より印象的だったことは、各対処方法を提示する際、その背景にあるABAに基づく明確な根拠をわかりやすく説明してくださったことです。このことで私たちは心の底から納得して子どもと対峙でき、そのことがより効果的かつ確実な結果へとつながっていったものと考えています。正確に子どもの特性をとらえ、わかりやすくABAを指導してくださる上原さんのコンサルに私たち家族は救われました。

飼いネコとじゃれあう姿

今では大声で泣き叫び自傷行為を見せていた我が子の姿はみじんもなく、本来のおちゃめな性格で私たち家族をそして友だちや先生までも笑わせる少年に成長して参りました。そして自分のことだけでなく、飼い始めたネコの世話をしたり(好きすぎて少ししつこいところもありますが)、友達のことを思いやる気持ちを素直に発言できるようになったり、周りから愛される人間性が育って来ているように思います。

私たちが目指すゴールは、この子が一人でも社会で生きて行ける術を得ることであり、それにはまだまだ伸ばしてゆかなければならないこと、学習しなければならないことがあります。しかし私たち夫婦に上原さんよりご指導いただいたABAのスキルがある限り、どんな困難もきっと乗り越えて行けると思います。

ABAはどんな年齢でも適用できるものであると思いますし、現に私たち家族は救われましたが、その一方でもっと早くからABAに取り組んでいれば我が子を苦しめることもなく、さらなるベーススキルを手に入れられた可能性があったと思っています。


同じ個性を持つお子様をお持ちのご家族が、少しでも早く正しいABAに出会えることを願っています。

上原さん、ありがとうございました。

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